ドアをひらこうにも、みぎてがいもむしになって、鍵穴から果汁がたれる、ほらほらこれがかの女のちいさな胸、ひだり隣のおとこがさしだすのは腐った西瓜とまとわりつく小蝿だった、ものをかぞえるということの不可能性、血をみたこどものあざやかな心象、ぶん殴られる、頭、体、しぼりつくされた精液の、遺伝子には覚醒と不滅、空はふかく、山はおぞましく隆起して、あらがいあうもの、こぼれおちる、文字たちのかけらが、つながりあうことをうしない、つながろうとする文字たちは火焔を散らし、い、つ、か、海が乾き、生きたものがすべて感傷の彼方へと、あらゆる肉をとおってひとりの詩人の、ざらついた脳、砂のような喉、ガラス片のような目をもって、引っ掻かれたねこがにゃーとなくとき、遠いところの石のなかの脊髄が、ちっとひかり、くらやみの中にとけこんで、とぢこめられ、みつめられることなく、かといってうしなわれることなく、ありつづける。
 ドアは、空に浮かんで、みんなが写真を撮っているよ。