2021/11/29

 尖った鉛筆を、朱色のインクに浸けて、紙の上に一瞬走らせる。ひととひとの関係性に口をだすことは、身をけずることに他ならない。きみは沈黙する、そこにたゆたうのは詩でもなく、ゆたかな乳の香りでもない。不在、ということ。それから、声の残響。説明してほしい、どうして精液はその川にまざりあうことがないのか。宮沢さんはぼくを突き放す、帰ってくれ、これから書かないといけないからと。わずかな雨が、塩のように降る。きみは目をあけて、眼球の水晶にとかそうとして、思わず目をつむった。わすれてはならない、と、言ったのに、聖書をぼくの枕元に置いて、始発の電車に轢かれた。聖書にはむすうのふせんが貼ってあって、朝日に照らされて、きらきらとひかっていた。間違いなくきみは、天国に行くことはできない。なぜなら、用水路に液体窒素を流し込んで、色あざやかな鯉が、いっぴきにひきと浮いてくるのを、わらっていたから。