2021-10-01から1ヶ月間の記事一覧

血場

なんてうるわしい、と殺伐を繰り返す 盲腸同時進行でうるうる予感する洗浄、赤血球細胞泡立つ影の先鋭 清らかな心を持った豚が食肉になることを受け入れない! 数えきれない臓物、血みどろのカマキリが ハシルハシル宙を切って 自らが切断されてもおかまいな…

散らばる鳥

ぐつぐつと土壌は煮えたぎる 遠くの絶命が聞こえてくる 不動の空よ 焼けて腐るのは女たちの女陰だけ わずかな草とともに 自然は全貌する 父の金切り声 引き裂いた下着の赤い膿から出る出るぼくの体 地中深くで根が巨大化する 殺戮前夜 化粧をして微笑むきみ…

2021/10/13-2

あしたせかいは 恐竜博物館を粉砕する 想像できるか すべてがきみの目からおぞましく飛び出してもう止まらないことを ありふれた日々に裂かれた虚無のありかを ざらついた皮ふに刻み込まれるむすうの欠落を なんにも知らなかったら きっと星を見て感動してい…

2021/10/13

書史を学ぶために体を横たえる、このとき初めて全世界の閉域からの逸脱を覚える、かすかな雨が地に突き刺さって、歩くことをむずかしくする、ご覧なさいこの体この血この視神経は絶えず衰え、かれらは広がってゆく、ぼくの手に負えない、おぞましいイメージ…

2021/10/12

やがてかれらは ぼくの前 いなくなる 声につよさがない 信じることはつらいからね セメントに足が ほがらかな歌声 亀裂の入った空には体の輪郭がないから ざらついた足音の どこかで燃える幽林からっぽでこわれて部屋の隅に立つ少女の結び目がぼくの目との距…

2021/10/11

部屋のなかに黒い部屋があって、暗くなる時間、ドアが音もなく開かれる。愛情や憎悪のしずまったこの時間、そっとぼくの胸のなかに手を入れて、大切なものを持ってゆこうとする。光差す天使の純朴さよ、どろどろとした悲しみは油田のように尽きないから、夕…

2021/10/10

空の雲は砂糖でできていて、あんなに夕暮れほどけている逆光してる、人の顔がどこにもないと思ったらここにあった。さらさらと流れている、それほど巨大なものはないとひとびとが口にするとき、ぼくは台風の目のなかにいる、台風にとっての。ざらざらしてい…

2021/10/08

青空の中に夕暮れがあった。鳥は銃弾のように飛来し、川の上流から下流へと、ねばっこい油が流れている。眼が山を焼き焦がすとき、いちもつが空を突き破ろうとする、ああ、そうやってせかいはひっくりかえって、突かれているのはぼくだ。やめて、やめて、兄…

2021/10/05

すべてをうしなって からだも 肉体も なにもない それでいい どこまでも行けると思っていたけど それは全体から個をひきちぎることなのか 全体がなければ個はないのか ぼくはなんだ これから先 しずかな毎日 なにもない これ以上壊すのか 風景 写真 映像 ぼ…

2021/10/03

彼は川で、対岸を見ている。その向こうの山。空。雲は夕闇にほどけて、消えかけている。水の音がずっと聞こえる。流れ。彼はさらに向こうを見る。日は落ち、飛行機雲が金色に線を描く。すべては夜になる。ぼくが彼を見かけたとき、彼は薄暗がりのなかで、ま…

2021/10/02

その駅には電磁波のような耳障りな録音された声が流れていて、階段をのぼったり下りたりしていた彼はその声が脳髄にまで響くような気がして、拡声器をもったひとりの男に近づき、