ひきさかれたうえに塩がぱっぱとふられ、あしたかわへ沈もうとおもう。幻の放流のなかをおよぐかの女は軍隊式のぼくらを見ることはけっしてない。ざっざっと弦楽器がそろって鳴る。わたしみらい、遠くへはいけない。あした狂う、暴力的なひかりの中で。
 へいこうしへんけい、とトイレの壁に書いてあったから、口にだして言ってみたらとなりの個室からおうとうがある。
「みどり色がまたやってくる、橙色も。そのためにも、大便を顔に塗って、まちかどに立つ売り子にへいこうしへんけいの彫刻を突き刺すんだ!」
 ほらほら、ゆがみ、ほころぶ、夜明けの前で、拡散した蛍光灯の破片を、おもうぞんぶん吸い込んでしまえばいい。わたしの肌はざらざらだから、なめらかな白い肌の、とうきのようなつめたさにふれると、みるめというものが、ほんのわずかなかげをのこしてきえてしまう。