2021/10/12

 やがてかれらは ぼくの前 いなくなる 声につよさがない 信じることはつらいからね セメントに足が ほがらかな歌声 亀裂の入った空には体の輪郭がないから ざらついた足音の どこかで燃える幽林からっぽでこわれて部屋の隅に立つ少女の結び目がぼくの目との距離にあって 空虚に 山と海の波動のない平野に 世界の混乱がある ざくろの破裂 便器のなかのむすうの瘤 花開く瞬間のわずかなためらいに滴る水滴の絶壁 駆け登っていって階段が崩れるままに魚は息をする棲家のところどころからあふれる火の粉の耐え難さ やがてくる終わりのために 町々では風景画家が息をひそめている 苦しい夜 それは部屋中がめくれあがって血の肉が傷んでいるからだ 狂熱はきょうも穏やかで 咎められる生活の無さ あるいは地盤の崩れた虚 ヘンリーミラー いつまで書くんだ 雨は強く 虫歯が痛む 狂熱が発火する 太陽が落ちてくる ぼくは研ぎ澄まし 終わることを終わらせる