小魚が、ながれてきたあがいてる蟻を、噛む。血も痛みもないし、だれも、おそらくその小魚さえ、蟻が死んだことを、知らない。その蟻は、夢中になって、砂場の端から端を歩いていた。意味もなく。そこからどのようにして川の中に落ちたのか、歩いているときも、水でもがいているときも、動くことは、楽しい。あの海まで行ってしまえば、どんなにもがこうと、泳ぐ真似をしてみようと、陸地に辿りつくことはできないだろう。砂の粒が石だとしたら、さらに小さな砂が、蟻の首元に付着していて、けっこうかゆかったりして、子どもに足を一本抜かれたときも、除草剤の撒かれた茂みを歩いてときも、苦しかったけど、でも、そんなことは、ありえないから。蟻はぼくを拒絶する。生きていようが死んでいようが、お前には無関係だと、沈黙によって、自覚させる。