2021/10/08

 青空の中に夕暮れがあった。鳥は銃弾のように飛来し、川の上流から下流へと、ねばっこい油が流れている。眼が山を焼き焦がすとき、いちもつが空を突き破ろうとする、ああ、そうやってせかいはひっくりかえって、突かれているのはぼくだ。やめて、やめて、兄さん、服を破ろうとする兄さん、もうだれの服なのかわからない、樹木は油絵のように生々しく、枝葉と呼ぶにはあまりにも大きすぎる、そしてここからは遥かな女たちのうめきざわめきその燃え立つ瞳、ああやめてやめて見ないで、男からも女からも逃走する、銀のなめらかな鱗を持つ魚たちが一斉に飛び跳ねて、体中のじんましんからタチアオイが咲く、裂かれた、やわらかい皮ふを持つきみは、もうそこにはいない。わかってるんだ、読むことも書くこともできないって。わかっている、ぼくは多数派だ。星と星がこすれあって、気持ちいいね、きみのまつ毛を食べるみたいで、ほとんどの声はどこにもなかった、あるのは埃と、ごはんつぶと、海だけ。海! やがてくる渇きを、海は拒絶する。あまりにもちいさな町、老いとやわらかな成長、管弦楽団が静止する、あ り え な い 、窓からきこえる、窓のガラスから聞こえる、ガラスの粒子から聞こえる、ぼくの耳から聞こえる、こうやって、ね、潰すんだよ、からだをね、忘れるまで。